PCM(ディジタル)方式による録音技術の進歩と、それに呼応してハイレベルカッティングされたディスクが数多くでている中で、カートリッジのトレーシング能力向上が強く要求されています。
また、レコードに刻み込まれた信号は「何一つ逃がしたくない」という欲望は、我々カートリッジ設計陣の理想でもあり、ディスクマニアの永遠の夢でもありました。この様にトレーシング能力を極限まで高めるには振動系を過酷なまでに軽減し、機械インピーダンスを小さくする以外、方法はありません。
この課題に取り組んで以来約3年の歳円を費し、DL-1000Aは、ここに登場します。
DL-1000Aの主な特長
■ 軽量化の極限に挑戦し、驚異的な実効質量"0.077mg"を実現
DL-1000Aの振動系は、複雑で微細な音溝に対し忠実にトレースを行なうため、新素材ニューアモルファスボロンパイプを採用して徹底的に振動系の軽量化をはかり、実効質量"0.077mg"を実現しました。(DL-305は0.168mg)
また、軽実効質量とバランスのとれたハイコンプライアンス化と相まって、中低域はもちろんのこと、高域の微細な音溝まで極めて安定したトレースを行ない、しかも大切な音溝を変形させることは極めて少なくなっています。その結果、再生帯域は20Hz〜110kHzというかつてない超広帯域に及んでいます。
(1)高い剛性・超肉薄軽量ニューアモルファスボロンパイプカンチレバー
カンチレバーの素材として最も理想的と云える大きな比剛性をもつアモルファスボロンをDL-305、DL-207に採用し、好結果を得ていますが、更に強化したニューアモルファスボロンパイブを開発し、外径0.3mm、肉厚0.023mm、長さ4mmのカンチレバーを採用しています。
(2)世界最小マイクロ・スタイラスチップ
針先から見た実効質量を小さくする時、最先端に位置するスタイラスチップの軽量化は大きな効果があります。スタイラスチップのマイクロ化は大変困難とされてきましたが、加工技術、精度を更に向上させ0.06mm角のマイクロチップを誕生させました。(DL-303/305の約1/2)
形状は精密加工された特殊楕円針となっています。
(3)小形十字型巻枠と極細銅線を採用
十字形巻枠は質量の軽減ができることと左右チャンネルの発電コイルを独立して対称に巻くことができ、振動時の動的バランスが良く左右チャンネルの感度差が少なく、揃った特性が得られることの2つの大きなメリットがあります。バランスのとれた発電コイルは、極細の銅線を採用し、振動系の大幅な軽量化を前進させています。
(4)羽毛のように。レコードに優しい針圧0.8gで安定トレース
実効質量の駕異的な低減化により、バランスのとれたハイコンプライアンス化が可能になり、0.8gの軽針圧にて十分なトレース能力を示し、ハイレベルカッティングレコードに対しても安定したトレーシングを実現いたします。
(5)2WAYダンピングシステムによるフラットな超広帯域再生
実効質量の低減による広帯域化とともに、DENON独自の2WAYダンパーの採用と相まって、110kHzまでフラットな周波数特性を実現していると共に、エネルギーバランスの良い再生音が得られます。
また、温度特性が良いこと(寒冷地と温暖地による音質差が少ないこと)も2wayダンピングの見のがせない特長の一つです。
■ 強力な発電構造
小形軽量で、しかも強力な空隙磁界を得るため、サマリウムコバルト系マグネット(磁気工ネルギー積は従来の数倍)を採用しました。
カートリッジの自重は6gと軽量化を計っていますが、カートリッジの自重を小さくすることは、トーンアームの針先位置からみた実効質量を小さくするのに効果があり、レコードのソリ偏芯に対する追従性を高めるのに大きな効果があります。
■ 針圧対出力電圧特性を重視
DENONでぱ、基本性能の一つとして針圧対出力電圧特性を大変重視しています。
カートリッジの振動系は、レコードのソリ等の影響によって余分な変化を受け、針圧は常に変化します。このため、発電系の直線性が悪いと出力電圧は大きく変動したり変調を受けて、クリアーな再生音は得られません。
DL-1000Aは、発電系の直線性に優れ、トレース能力の優秀性等とあいまって常に忠実度の高い安定した再生音が得られます。
■ 強固なフレーム構造で無共振化を推進
優れた振動系の性能を十分に発揮させるため、無共振化された強固なフレーム構造を採用いたしました。
強力磁気回路と出力端子を含めたフレームをガラス繊維入り硬質樹脂と削り出し軽合金ベースで構成しているため、音のにごりのないクォリティの高い再生に効果があります。
驚異的トレース能力へ
世界最軽量−実効質量0.077mg
精緻を極め、磨きぬかれた振動系の実効質量は、あらゆるカートリッジの中で最も軽量な0.077mgを達成。同時にダイナミック・コンプライアンスも世界最大の20×10-6(スタティック50×10-6)cm/dyneを実現。まさに驚異的なトレース能力を獲得しました。この新次元のトレース能力によって、かつて到達できなかったレコード音溝(グルーブ)にある音楽的深みにたどりつき、従来再現できなかった音楽情報をすべて引き出します。
■ 音溝トレースの比較
■ DL-1000A出力電圧及びクロストーク対周波数特性
■ 温度変化による周波数特性の比較
■ カートリッジケースはカートリッジキーパーに早がわり
DL-1000Aは、ベルベット貼りケースに収納してお届けいたします。このケースはシェル付カートリッジ5本を収納することができます。
なお、DL-1000Aを取り付けている台は、カートリッジ取り外し後、オーディオ・スタビライザーとして御使用いただけます。
DL-1000A主要規格
- 発電方式:ムービングコイル型
- 出力電圧:0.1mV(1kHz 5cm/sec水平方向)
- 左右感度差:1dB以内(1kHz)
- 左右分離度:30dB以上(1kHz)
- 電気インピーダンス:33Ω(20kHz以下)
- コンプライアンス:
・レコード測定値 20×10-6cm/dyne(100Hz)
・静的測定値 50×10-6cm/dyne
- 振動子実効質量:0.077mg
- 針先:0.06mm角 ソリッドダイヤモンド特殊楕円針
- 針圧:0.8g±0.1g
- 再生周波数範囲:20Hz〜110kHz
- 適合負荷抵抗:100Ω以上(トランス使用の場合は40Ω)
- 自重:6.0g
- 価格:100,000円
- 針交換価格:60,000円