放送機、業務用機を造りつづけてきたDENONが、オーディオマニアの方々のために開発した、本格的な高性能オープンデッキDH-710Sの性能を更に高めたのがDH-710Fです。
DH-710Fのトランスポートは、ダイレクトドライブによる2キャプスタン駆動方式で、テープに理想的な条件を与える電子式テンションサーボの採用により、安定したテープ走行を図り、しかもテープの安全性にも十分配慮しています。
ヘッドや録音・再生アンプ、操作性等にもDENONの最新技術が活かされ、特にテープの特性を最大限に活かすバイアス・イコライザーの連続可変調整方式を採用しています。
より高い性能を追求したDH-710Fは、変調雑音や、ウウ・フラッターの低減、高SN比、低歪率を実現し、極めて忠実度の高い録音・再生をいたしますので、高度なオーディオマニア、音楽ファンの方々に十分ご満足いただけるものと確信いたします。
●業務用機の技術と経験の活きている高信頼性メカニズム
1)ダイレクトドライブ2キャプスタン方式
キャプスタン駆動は、スピード検出に磁気記録再生方式を採用したサーボ方式によるダイレクトドライブ方式で、このキャプスタンモーター軸と非弾性ベルトで結合されたサブキャプスタンによる、2キャプスタン駆動方式を採用しています。
このため、テープテンションの変動や、立上り時の大きな負荷の変動に対しても安定しており、ワウ・フラッター(0.02%wrms以下、38cm/s時)や変調雑音などの特性も非常に優れています。
2)電子式テンションサーボの採用
テンションサーボの採用により、録音・再生時におけるバックテンションを一定に保ち、ヘッドタッチをより安定に保ちます。
このため、供給側テープの巻径によるテープスピードの変動や、ワウ・フラッターおよび変調雑音の増加がありません。
早巻き時においてもテープテンションは一定に保たれ、程よいかたさでリールに巻かれます。
3)テープをいためない合理的な走行系
左右のテンションアーム間のテープ走行系は、なるべく直線に近くなるように設計されています。
また、テープの接触する個所は、ヘッド以外はすべて特殊ガイドローラーにするとともに、ワンウェイ・エアーダンパーをテンションアームに採用して、スタート時の過度なテンションを防いでいます。これにより、テープの操着は容易になり、またテープのいたみが大巾に減りました。
テープ走行部
4)新しく開発したDENON製センダストヘッドを採用
新たに開発したセンダスト合金ヘッド(トラック巾2.1mm)を採用していますので、再生時のS/Nがより向上し、また、長時間の使用にも安定した性能を維持いたします。
再生ヘッドは特殊形状に仕上げてありますので、38cm/s時における形状効果が少なくなり、高性能録音・再生アンプとあいまって、歪率特性も向上しています。
5)使いやすいキューイング機構
早送り、巻戻しのとき、テープを再生ヘッドに近づけられますので、再生音により録音されている個所をさがすことができ、テープの編集や再生音の頭出しに便利です。
●業務用機の規準に基づいて設計された録音・再生アンプ
1)ダイナミックレンジが広く、規準レベルに対して十分余裕のある録音アンプ
プッシュプル回路を使用した録音アンプの最大出力レベルを、業務用機と同じく、規準レベルに対して30dB以上(1kHz)の余裕をとりましたので、録音アンプの飽和による歪が録音されることは、ほとんどありません。
2)規準再生レベルが設定できる再生ボリューム
再生ツマミを長線の基準位置(クリックストップ)に合わせることにより、録音レベルや再生レベルをチェックすることができます。(0VU,0.775V出力)
3)最適なバイアス量と録音イコライザー特性を設定できます
バイアス量と録音イコライザー特性の連続可変方式を採用していますので、テープ別調整表により、前面のBIAS及びEQツマミとVUメーターで、最適なバイアス量とイコライザー特性を設定できます。このため、リニアリティと周波数特性を最良の状態に設定できます。
4)マイクアッテネーターの採用
12dB減衰するアッテネーター・スイッチがついていますので、マイクの感度や使用状態に合わせて切換えることができますので、SN比が良く、ダイナミックレンジの広いマイク録音ができます。
また、マイクアンプの余裕度はいずれの場合でも55dBありますので、アンプで飽和することはほとんどありません。
5)ピーク・VU指示切換式のレベルメーター採用
レベルメーター切換スイッチによりピーク指示とVU指示に切換えられますので、最適録音レベルの設定が非常に容易になります。(ピーク最大指示+13dB)
●キメの細かい設計
1)リールモーター軸の回転検出機構による安全設計
テープをいためないため、早送り、巻き戻し中に再生ボタンを押しても再生動作になりません。テープ(リールモーター)が停止してからでないと再生・録音ができないように設計されています。
2)光電式テープエンドセンサー
テープ走行が終ったとき、光電式テープエンドセンサーにより、メカニズムは自動的に停止いたします。
3)4トラック再生も可能です
4トラック再生ヘッドが取付けてありますので、ヘッドハウジングの切換スイッチにより4トラックテープの再生もできます。
4)マイク回路とライン入力回路とのミキシングが可能です
5)リモートコントロール可能
トランスポートパネル面と同じ(5ボタン)操作のリモートコントロールが可能です。
●DH-710F主要規格
- 形式
- 3モーター・2スピード・ステレオオープンテープデッキ
- 使用モーター
- キャプスタン用:6極アウトローター形ACサーボモーター1個
- リール用:6極ACサーボモーター 2個
- 駆動方式
- キャプスタン部:ACサーボによるダイレクトドライブ・キャプスタンとサブキャプスタンによる2キャプスタン駆動
- リール部:ACサーボモーターによるテープ・テンション・サーボ駆動
- トラック形式とヘッド
- 2トラック・2チャンネル
- 録音ヘッド(センダスト)
- 再生ヘッド(センダスト)
- 消去ヘッド(フェライト)
- 4トラック・2チャンネル
- 使用リール径
- 使用半導体
- メカニズム部:トランジスター39個,ダイオード63個
- アンプ部:トランジスター57個,ダイオード26個
- テープスピード
- テープスピード変動
- 0.2%以下(10・7・5号各リールの巻始め、巻終りにおけるテープスピードの差)
- テープスピード偏差
- テープエンド検出
- テープ張力変化
- 録音,再生時:20g以内
- 早送り,巻戻し時:40g以内
(巻取側,供給側とも10号リール最外周より5号リール最内周までの巻径の変化に対して)
- 早巻き時間
- ワウ・フラッター
- 38cm/s 0.02%wrms以下
- 19cm/s 0.025%wrms以下
- 立上り特性
- 38cm/s 0.9秒以内
- 19cm/s 0.4秒以内
(起動時よりワウ・フラッターが規格値内に入るまでの時間)
- 総合周波数特性
- 38cm/s 30〜30kHz ±2dB
- 19cm/s 20〜20kHz ±2dB
- 録音再生補償特性
- 録音バイアス
- 約200kHz(バイアス量+40%〜−40%調整可能)
- チャンネルセパレーション
- 入力
- ライン -22dB(VR最大時)100kΩ不平衡
- マイク -72dB(ATT OFF)-60dB(ATT ON)50kΩ不平衡
- 出力
- ライン 標準出力レベル0dBm(0VU 0.755V)出力インピーダンス100Ω以下、負荷インピーダンス600Ω以上
- ヘッドホン 適合負荷インピーダンス8Ω
- 総合高調波歪率
- 1kHz規準レベルにおいて0.5%以下(スコッチ206使用)
- 総合S/N
- 最大録音レベル(514pwb/mm)に対して66dB以上
- 規準録音レベル(200pwb/mm)に対して58dB以上
- リモートコントロール可能
- 附属品
- 10号リール×l/10号リールクランパー×2/7号リールクランパー×2/リール高さ調整ゴムシート×2/ヘッドクリーニング・セット×1/PINコード×2/オイル×1/ソケットレンチM3用×1/メカニズム・アンプ用蓋
- 総合
- 電源 AC100V,50/60Hz
- 消費電力 130W
- 外形寸法・重量(フタをしめた寸法)
- メカ部:505(W)×420(H)×310(D)(mm)27kg
- アンプ部:490(W)×180(H)×330(D)(mm)8.5kg